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第9回 灯しびとの集いを終えて

20172017.11.23

9年目を迎えた灯しびとの集い。
前夜の雨は、会期中に降ることを遠慮してくれたのは大変に有り難く、徐々に薄れゆく「雨降りイベント」の汚名返上の一助になってくれました。しかし雨の量は相当に多く、会場のグラウンドの有様は決して優しく私たちを出迎えるものではありませんでした。
天気予報に注意して見込んだ雨対策用品は、プラスチックのスノコのようなパレットが数十枚。それも「念のため」だった物が会場のあちこちで取り合いになる程。なかなかに厳しい滑り出しの9回目。それでも早くから来場を楽しみにしていてくださった方々は怯むことなく、足元のぬかるみを気にしつつもお目当の作家のブースを探し始めていました。

徐々に会場は人で埋まり、例年通りの場所には、見慣れた人の列ができていました。今年も会場には約36,000人の来場者をお迎えすることができました。

雨の後は気温が下がり、寒い日になった初日は出店のコーヒーショップを賑わし、ガラス作家のブースには、何となく申し訳のない光が落ちていたように思います。一方でストールやショールを作られている作家のブースには人の目が集まっていたのも自然なことでしょう。野外展示ならではの展開に妙に納得しつつ会場を巡回していると、気が付けば毎年のように見る光景が作家ブースの間にも広がっていました。
笑顔で作品を手に取り作家と会話を楽しむ人。一生懸命に作品について説明をする作家。親のお買い物に付き合わされてやって来た大仙公園で、そっちのけで遊ぶ子供たち。代理で飲食の列に並ばされていそうなお父さん。大音響で演奏するミュージシャンの音楽をじっと聞いているおじいちゃんやおばあちゃん。会場で偶然に出会い喜び合う友達同士。忙しくてお会計に人が並ぶブースもあれば、奥まで見通しが良くてうっかり作家と目が合ってしまうブースも・・・

寒さに警戒していつもよりも余分に着込んで乗り込んだ2日目は、準備を嘲るようなぽかぽか陽気に恵まれました。
青い空に響く子供達の声とスピーカーから届くミュージシャンの歌声。そんななかを、この先ずっと付き合っていくだろう物をじっくりと確かめる人たち。複雑に交差し絡み合う物や情報の行き来に馴れることを、利便性と引き換えに生活する私たちに会場の風景は「本当はこういうことじゃないの?」と問いかけているような光景がそこにはあるように思いました。

作家は使い手のことを思います。使い手は少し自分のことを思ってくれている作り手がいたんだと、そんな気にさせる作品に巡り会います。あなた個人を思って作られた物はそこにはありません。でもまるで自分の好みを知っていたかのように、そこでその作品はあなたの来訪を待っているのだと思います。

太古の昔から人は物を作り、人はそれを使いながら暮らしています。物資的に物が限定的であった時代には、人の好みも一元的でした。だから多くの「同じ物」が必要でした。しかし現代はすっかり「好みの坩堝」と化し、同じ物を多く必要とはしなくなりました。
細分化された人の好みに対応するには少量生産が好ましく、無駄に作られる物は瞬く間にゴミと化し、これでもかと環境に負荷を与え続けています。少ししか作れない「手作り」は現代において正義なのだと思います。しかも、それが使い手に渡るその時までは商品というカテゴリーに加わっておらず、作品として作り手の気持ちを離れないとすれば、それは称賛に値するでしょう。・・・言いたいことは、灯しびとの集いは「正義の味方」なのだと言うことです。

作品と使い手の偶然の出会いを企て、始めたこのクラフトフェア。毎年その偶然の出会いは会場に潜んでいるのだと思います。しかし、実際の会場の様子からは「待ちに待った」という雰囲気が感じ取られました。きっと灯しびとの集いは、人々の心の豊かさを満たす機会になり始めているのでしょう。

私自身の思惑通りに「毎年ここで、作家の作る暮らしの道具を一点選ぶ」という行事が定着したかどうかは定かではありませんが、来場の方々の様子からはそんな物語が聞こえてくるかのように見えました。
決して刺激的なエンターテインメントを求めるものではなく、暇つぶしに出かける遊び場でもなく、かといって日々のお買い物でもない。そこに確かにあるものは「出会いを求める気持ち」になり始めている印象でした。

灯しびとの集いが、皆が待ちわびる出会いの場となり得るのは、会に応募してくださったすべての作家、出店の飲食店、ミュージシャン、作家選考にご尽力いただいた選考委員、その他、開催に協力していただいた多くのボランティア、そして日々準備を進める実行委員がいます。無償でこの会の開催に関わる人たちがいることで実現し、求めないことで持続ができているように思います。
誰かの賞賛を期待することも、ご褒美を受け取ることもなく・・・ ただ、多くの人が灯しびとの集いに集まり、それぞれの出会いに胸を踊らせる。そしてその出会いが豊かに人々の暮らしに浸透していく様子を目の当たりにする。これ自体が「灯しびとの集いでの出来事」を準備した思考や労働のすべてが報われるように思います。

既に来年の多くのドラマを思いつつ、今年の開催に関わってくださった皆さま、会場にお越しくださった皆さまに厚く御礼を申し上げます。

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