お知らせ

第7回 灯しびとの集いを終えて

2015, 新着情報2015.11.20

 第7回「灯しびとの集い」は晴天の下、無事に終了することができました。この会にご参加いただきました皆様、直接・間接を問わず会の運営にご尽力くださった皆様に深く御礼申し上げます。本年度の開催は初日の天候が芳しくなく、開催を心待ちにしていただいていた皆様でさえお出掛けを控えられたのではなかったでしょうか。第7回の開催にご来場くださった方は25000人と報告されています。

 毎回、会場閉場時に作家の皆様をお見送りします。思い起こすも、夜空に輝く三日月を見上げてのお見送りは記憶になく、初日の大雨が嘘のようでした。お陰様で清々しく皆様のお見送りができました。何かにつけ、最後は大事で「終わり良ければすべて良し」と言われるように、その途中に紆余曲折や混沌があったとしても、辿り着いた先に仕合わせがあれば良いのではないか、という考え方。では、終わりの見えないことに対して、どう関わっていけば良いのでしょう。多分それは、関わるそれぞれの人の時間を基準に多くの始まりと終わりがあって、それらが関係する対象に息吹きを与えているのだとすれば、物事に終わりが無くとも気持ちの穏やかな終わりがそれぞれの人の中にあることに置き換えられるのではないでしょうか。つまり物事の終始を整えるのではなく、関わるそれぞれの人がその人に相応しい関係を持ち、持てる時間を費やしていく、その先には個人的な満足があるのです。
 今、クラフトはブームの坂を登っています。「灯しびとの集い」を始めた当初、クラフトをブームにはしたくないという思いは強く、ブームになった後の衰退を恐れていました。しかし、やはりブームはやってきました。物の供給が十分ではなかった時代に膨れ上がった、既存の供給基盤のシステムを充実させるような商品がなくなった今、以前のような大量生産・単純消費という現象は静まりました。ただし、販売や流通の分野においては、その機能を維持すべく商材を求め、多様な対応によって根気強く動き続けています。そして、その商習慣にクラフトが落とし込まれています。商品を売るという行為そのものが、商品を取り巻く周辺の環境をも宣伝してしまいます。その結果として「流行」という現象に発展、多くの人を巻き込んでいきます。

 さて、この「流行」を皆さんはどんな風に捕らえますか? “本当にクラフトとして秀逸な生活の道具という作品を、人々の暮らしに滑り込ませる。” そんな狙いを持って始めた「灯しびとの集い」は、単純に手作りの物が市場に氾濫する様子に危惧を感じながら、クラフトフェアを開催してきました。しかし、実際にその現実が目前に広がり、多くの人がそれらに関わるようになりました。ところが、その事実は直面してみればそれほど怖いことではありませんでした。公園というバブリックな場所での開催は、作品(作家)と使い手の偶然の出会いを期待した故。本当に優れた物を紹介することで、目利きを育み、次代のクラフト振興や豊かな生活環境を牽引する目的を持って続けてきました。今実際に目前に起こっている現象は、人々に多様で豊かな「選択肢」が育ち、多くの人がそれを楽しめるという状況ではないでしょうか。

 楽しめるという状況は非常に個人的で、その言葉には様々な意味が含まれているように思います。その個人的な楽しみはクラフトによって芽生え、始まり、クラフト自体を意識することなく、その物が人の暮らしに自然と寄り添うことで、その個人の「ブーム」は終わっているのでしょう。
 社会的なブームによって関わる人が増える。これはクラフトそのもの層に厚みが増し、そのことでより優れた物を選りすぐる場所が豊かになる。始まりと終わりをできるだけ多く巻き込んでいくことでクラフト全体が活性を保ち、それぞれの気持ちがクラフトの世界をかたちづくる。その側に「灯しびとの集い」はずっとあり続けたいと願います。

 「灯しびとの集い」はまだまだ発展途上にあると考えます。これまでもそうであったように、微力ながらも改善点を見出し、対処していく所存です。本年度の開催が無事に終えられましたこと、これも一重にこのサイトをご覧いただいている皆さまのお陰と存じます。勿論こちらをご覧になられていない方にも大いにご協力をいただいているに違いありません。今後も変わらず、会へのご理解、ご協力を賜りますようよろしくお願申し上げます。

 最後に。このクラフトフェアは完全なボランティア活動によって成り立っています。無償で時間や労力を惜しまず、クラフト振興に献身する皆さんの力です … 個人的には、このイベントが今の状況で成立していることが奇跡に思え、只々感謝に平伏する気持ちです。この場をお借りして「縁の下の力持ち」の皆さんに深くお礼申し上げます。

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2015年11月吉日
灯しびとの集い 実行委員会会長
辻野 剛

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